はじめに
プロップファームをEAで攻略するには、「本物のエッジを持つEA」が大前提です。しかし、バックテストの成績が良いだけでは本物かどうかわかりません。
バックテストで年利100%超のEAを作ったのに、実運用を始めた途端に負け始める。原因はほぼ100%、 過適合(オーバーフィッティング) です。
過去のデータに合わせすぎたパラメータは、未来の相場では通用しません。プロップファームのチャレンジ費用を無駄にしないためにも、EAの実力を正しく評価する方法が必要です。それがWFA(Walk-Forward Analysis:ウォークフォワード分析)です。
WFAとは何か
WFAは、バックテスト期間を「最適化用(In-Sample)」と「検証用(Out-of-Sample)」に分割し、 未知のデータに対する性能を繰り返しテストする手法 です。
Window 1: [===IS===][=OOS=]
Window 2: [===IS===][=OOS=]
Window 3: [===IS===][=OOS=]
...
各ウィンドウでISデータを使ってパラメータを最適化し、そのパラメータでOOSデータの成績を確認します。OOSで利益が出なければ、そのパラメータは過適合です。
WFAの設計基準
自分が実際に使っている設計基準をまとめます。
IS:OOS比率
3:1(OOS 25%)が最適 。Pardo(2008)の研究に基づく推奨値です。
- 2:1だとISデータが少なすぎて最適化が不安定
- 5:1だとOOSが短すぎて検証が甘くなる
ウィンドウ数
最低5〜9ウィンドウ 。少なすぎると偶然の一致を見抜けません。
合格基準は 70%パス (7/10ウィンドウで利益が出ること)。これより低いと統計的に有意とは言えません。
最低トレード数
OOSウィンドウあたり 30〜50トレード以上 が必要です。
- 20トレード未満:統計的に無意味
- 50〜100トレード以上:信頼性が高い
- 全OOS合計で385トレード以上あれば、95%信頼区間で5%以内の誤差(Cochranの公式)
ローリング vs アンカード
ローリングWFA(移動窓)を推奨 します。
アンカード(固定開始点)は古いデータが残り続けるため、過去のスプレッド環境や流動性構造の影響を受けます。ローリングなら古い相場レジームが自然に除外されます。
時間足別の推奨データ期間
| 時間足 | 推奨データ期間 | 理由 |
|---|---|---|
| M15 | 2〜3年 | トレード頻度が高いため短くても統計的に十分 |
| H1 | 5〜7年 | 中頻度。複数の相場レジームを含む必要あり |
| H4以上 | 7〜10年 | 低頻度のため長期データが必須 |
重要なのはカレンダー期間ではなく、 ウィンドウあたりのトレード数 です。
18戦略をWFA検証してわかったこと
27ヶ月のOOS期間で18以上の戦略をWFA検証した結果、いくつかの重要な発見がありました。
ISの成績はOOSを予測しない
ISでProfit Factor 1.79を記録した設定が、OOSでは最悪の結果になることがありました。ISの数字だけで判断するのは危険です。
固定パラメータ > 最適化パラメータ
意外な結果ですが、 WFAの各ウィンドウで最適化したパラメータより、固定パラメータの方がOOS成績が良い ケースが多発しました。
パラメータを動かすこと自体が過適合のリスクを高めます。シンプルなパラメータセットを固定して使う方が、長期的には安定します。
フィルター追加は逆効果
「ヘッジフィルター」「傾きフィルター」「タイムストップ」など、成績を改善するために追加したフィルターは、 ことごとくOOS成績を悪化 させました。
フィルターはISデータのノイズに適合しやすく、OOSではそのノイズが再現されないためです。
WFAの合格率
18戦略テストして、WFAに合格したのは 8戦略(44%) 。さらにモンテカルロシミュレーションも通過したのは 3戦略(17%) でした。
半分以上の戦略が「バックテストでは良く見えたが、WFAで不合格」になります。WFAなしでEAを実運用に投入するのは、未検品の製品を出荷するようなものです。
おわりに
プロップファームをEAで攻略するには、まず「そのEAが本物かどうか」をWFAで証明する必要があります。
- バックテスト単体を信じてはいけない — 過適合を見抜くにはWFAが必須
- IS:OOS = 3:1、5〜9ウィンドウ、70%パス が実用的な設計基準
- 固定パラメータとシンプルなロジック が過適合に強い
- 18戦略中WFA+MC通過は17% — 大半の「好成績EA」は幻
WFAを通過していないEAでチャレンジに挑むのは、検品なしの製品を出荷するのと同じです。地味な作業ですが、チャレンジ費用を守るための最低限の品質保証がWFAです。